理学療法士が教える|低緊張・過緊張の赤ちゃんの特徴と関わり方

「抱っこしたときにグニャグニャして抱きにくい」


「授乳のたびに体が弓なりに反り返ってしまう」


「首すわりやお座りの獲得が遅くて心配」

そんな悩みを抱えていませんか?

赤ちゃんの体の硬さや柔らかさが気になったとき、それは『筋緊張』が関係しているかもしれません。

この記事では、小児発達領域のリハビリに10年以上携わってきた理学療法士の視点から、低緊張・過緊張の特徴や原因、そして日常でできる具体的な関わり方を詳しく説明していきます。

目次

低緊張・過緊張とは何か

筋緊張とは、筋肉が常に保っている『適度な張り』のことです。

筋力(力を発揮する能力)とは異なり、意識しなくても常に働いている 『姿勢を維持するための力』です。この張りが弱すぎる状態を『低緊張』、強すぎる状態を『過緊張』と呼びます。

どちらも赤ちゃんの姿勢・運動発達に大きく影響します。

低緊張・過緊張の特徴

低緊張の赤ちゃんの特徴

低緊張の特徴を以下にまとめました。

特徴低緊張
状態のイメージ□ 柔らかい、グニャグニャしている
姿勢の影響□ 重力に負けやすく、姿勢が崩れやすい(猫背やW座り)
運動の特徴□ 動きがゆっくりで、関節を支える力が弱い
抱っこの感覚□ 体が沈み込むようで、ずり落ちそうに感じる

低緊張の赤ちゃんは姿勢を保つだけで一日のエネルギーのほとんどを使い果たしてしまうという特徴があります。さらに首すわり、寝返り、お座りなど、重力に抗う動作の獲得が平均よりもゆっくり進む傾向にあります。

状態のイメージ

赤ちゃんの手足を動かしたときに抵抗感が少なく、柔らかく感じたり、グニャグニャしているように感じたりするのは、筋肉の張りが弱いからです。

姿勢の影響

自分の体の重さを支える力が弱いため、重力に負けて体が潰れるような姿勢になりやすいです。そのため猫背になりやすかったり、W字に座ることで、筋肉を使わずに関節で体をロックして安定させようとしたりします。

運動の特徴

関節を固定する力が弱いため、一つ一つの動作に時間がかかったり、動き出しが遅くなったりします。動きがゆっくりなのを見ると不器用なのかな?と思われがちですが、実は筋緊張の低さが影響しているのです。

抱っこの感覚

抱き上げたときに、赤ちゃん自身の体が大人の体にフィットしない感覚があり、抱きにくさを感じます。そのため抱っこしたときに、ずり落ちそうで実際の体重よりも重いように感じてしまいます。

過緊張の赤ちゃんの特徴

過緊張の特徴を以下にまとめました。

特徴過緊張
状態のイメージ□ 硬い、突っ張っている、力んでいる
姿勢の影響□ 体が反り返る、手足がピンと突っ張ってしまう
運動の特徴□ 動きがぎこちなく、スムーズな切り替えが難しい
抱っこの感覚□ 棒のように硬く、密着しにくいと感じる

過緊張の赤ちゃんは、強い筋緊張と反射の勢いによって体が動かされるため、運動の獲得が平均よりも早く見えることがあります。ただしこれは自分の意思でコントロールした動きではないため、その後の運動発達がスムーズに進みにくいことが多いです。

状態のイメージ

過緊張の子は常に全身に力が入っていて、リラックスするのが苦手なのです。そのため赤ちゃんの手足を動かすと抵抗感が強く、硬いと感じやすいです。

姿勢の影響

常に全身に力が入っていますが、何らかの刺激によって(例:抱っこをしたとき、自分で頑張ってお座りを保とうとしているときなど)さらに筋緊張が高まってしまいやすいです。そのため体が後ろに反り返ってしまったり、手足がピンと伸びてしまったりします。

運動の特徴

関節を滑らかに動かすのが難しく、カクカクした動きになりやすいです。これは筋肉を緩めたり、縮めたりの切り替えがスムーズにできないため、動きがぎこちなくなってしまうのです。

抱っこの感覚

抱っこをしたときに、赤ちゃんの体が大人の体に寄り添ってこない感覚があります。これは体が『棒』のように真っ直ぐ突っ張ってしまい、抱っこをしても隙間が空きやすいためで、抱きにくさを感じます。

低緊張・過緊張の原因

低緊張・過緊張の原因は大きく『個人差要因』と『障害要因』の2つに分けることができます。

低緊張の原因

個人差要因

筋緊張には個人差があり、脳や神経に疾患がなくても体質・環境・気質によって柔らかめに出る子が一定数います。しかし多くは成長とともに落ち着いていく傾向にあります。

①体質(良性乳児低緊張)
病気ではありませんが、生まれつき筋肉や靭帯が緩いことが原因で低緊張となります。これは性別を問わず見られる体質で、女の子の方が関節の柔らかさがあることと勘違いされやすいですが、別の話です。

②運動経験や環境
バウンサーやベビーチェアに乗っている時間が長く、うつ伏せや縦抱きの経験が少ないことで、体幹の筋肉を働かせる機会が不足してしまいます。これによって脳の『姿勢を保つために体の緊張を高める』という学習が遅れることが原因になります。これは適切な遊びを取り入れることで、急速に改善する場合が多いです。

経験上、個人差要因による低緊張の多くは、歩行獲得前後で体の安定感が増し、目立ちにくくなってくることが多いです。

障害要因

個人差要因とは異なり、障害を背景とする低緊張は脳からの指令の弱さや組織の性質が原因となります。リハビリによる運動の学習や環境調整がとても大切です。

①ダウン症候群
全身的に筋肉の繊維そのものが細く柔らかいことに加えて、靭帯が非常に緩いという特徴があります。これによって低緊張となり、首すわりやお座りなど、重力に逆らうことが苦手となります。

②脳性麻痺・弛緩型
出生前後の脳へのダメージにより、運動のための神経系にトラブルが生じた状態です。脳から筋肉へ伝えられる指令(重力に逆らって姿勢を保つ)が、体の末梢まで十分に届かないため、筋緊張を高めることができないのです。特徴として、呼吸や飲み込みに関わる筋肉にも影響が出る場合があります。

③ASD(自閉スペクトラム症)・ADHD(注意欠如・多動症)
筋肉そのものの病気ではありませんが、自分の身体がどこにあるかを感じる感覚の働きが弱いため、脳が『今はこれくらい筋肉を張らなければならない』という判断を誤り、結果として筋緊張が低くなり、姿勢の崩れが起きてしまいます。乳児期には抱っこしたときの『抱きにくさ』として気づかれることが多いです。

これらの障害要因が背景にある場合は、早めに専門機関を受診し、早期リハビリを開始することが大切です。

過緊張の原因

個人差要因

個人差による過緊張は病気ではなく、刺激への感受性の高さや環境によるものです。安心できる環境を整えることで、成長とともに徐々に和らいでいくことが多いです。

①体質
筋肉の繊維や、神経の興奮性が生まれつき高めの体質です。特別に力を入れていなくても常に筋緊張が高くなってしまう特徴があります。体幹がしっかりしている反面、手足を曲げてリラックスさせることが苦手です。

②過敏
触覚や聴覚、前庭感覚などの感覚が敏感なことで、ちょっとした刺激でも身を守ろうとして、全身に力が入りやすくなってしまうのが原因となります。

③原始反射の感度
赤ちゃんは生まれつき、大きな音や体の傾き・触れられることなどの刺激に対して、意思とは関係なく体が反応する『原始反射』を持っています。この感度が人一倍高いと、本人の意志とは無関係に、手足が頻繁に突っ張ってしまい、過緊張の赤ちゃんに見えてしまうのです。

障害要因

個人差要因とは異なり、障害を背景とする過緊張は脳から筋肉へのブレーキ指令が遮断されることが原因です。ブレーキが効かなくなった筋肉は常に収縮した状態となり、強い突っ張りや反り返りとして表れます。

①脳性麻痺(痙直型)
出生前後に脳がダメージを受けることによって、運動と姿勢の障害が起きてしまいます。これによって強い過緊張状態となり、激しく反り返ったり、足をクロスさせて突っ張ったりしてしまいます。

②脳室周囲白質軟化症(PVL)
在胎32週未満の早産児や低出生体重児に見られやすい脳の病変です。特に両足に強い過緊張が出現しやすいのが特徴です。

これらの障害要因が背景にある場合は、早めに専門機関を受診し、早期リハビリを開始することが大切です。

低緊張の赤ちゃんへの関わり方・遊び方

首すわり期

この時期は十分なサポートが必要です。重力に負けて平らに広がってしまう体を『真ん中に丸くまとめる(正中位の獲得)』ことと、『ここに自分の体がある』という感覚を脳に教えてあげましょう。

①仰向け姿勢の設定方法

バスタオルを細長く丸めてU字型にし、赤ちゃんの体の周りを囲んで寝かせてあげましょう。そのとき両方の肩甲骨の下にタオルなどを折りたたんで差し込み、少し厚みを持たせてあげることがポイントです。そうすることで、自然と顎が引き締まり、手と手、手とお口が体の真ん中に集まりやすくなります。

さらに太もも~膝裏にかけて丸めたバスタオルや小さめクッションを入れて、軽く脚が持ち上がる(30~45°程度)ようにしてあげると、体幹も安定しやすくなります。

②うつ伏せ遊び

大人がソファで少しリクライニングした状態で、赤ちゃんを胸の上で対面(うつ伏せ)にしてみてください。軽くうつ伏せの角度が付いていることでフラットな床よりも頭を持ち上げやすくなります。

床で行う場合は、赤ちゃんの胸の下に丸めたバスタオルを入れてあげましょう。そうすることでも赤ちゃんが頭を持ち上げようとする動作を補助してあげることができます。

寝返り・お座り期

この時期はそれまでの大きなサポートを段階的に減らし、自発的な動きをたくさん引き出すように関わっていきましょう。

①寝返り練習

大人が補助する方法は、『仰向けで片方の脚を交差させる+交差させた側の骨盤をやさしく持ち上げる』ことです。ここで下半身だけひねった状態で止めて、上半身が自らの力でゆっくりついてくるのを待ってください。

赤ちゃんが寝ているマットの片側にバスタオルなどを入れて、少し傾斜をつけてあげて寝返りを補助する方法も有効です。

②お座りの練習

座っている赤ちゃんの目の前におもちゃを置いて(赤ちゃんの目線~胸の高さ)、大人が後ろから体を両手で支えながら遊ばせましょう。

ここで一番大切なことは適切なサポート量にしてあげることです。

赤ちゃんの発達具合によって『脇の下』→『胸』→『お腹まわり』→『骨盤』のどこを支えるのが良いかは変わってきます。
赤ちゃんが姿勢を崩さず、目の前のおもちゃで楽そうに遊び続けられるポイントで支えてあげましょう。
※過剰サポートにならないように、姿勢がギリギリ安定するくらいのサポートで練習しましょう。

ハイハイ・つかまり立ち期

この時期も適切なサポートで、ハイハイやつかまり立ちといった難易度の高い運動の獲得を目指していきましょう。

①ハイハイの獲得に向けて

大人の太ももや丸めたタオルをお腹の下に入れ、四つ這い姿勢を補助してあげてください。
四つ這い姿勢が取れたら、さまざまな位置(手を伸ばせば届く位置)におもちゃを置いて、前後左右に体重移動する練習を少しずつ取り入れてみましょう。

②掴まり立ちの練習

低緊張の赤ちゃんがいきなり掴まり立ちを獲得することは難しいので、掴まっての膝立ち練習をして、それが安定してきたら掴まり立ちの練習をするという段階を踏んでいきましょう。

掴まる台の高さは、膝立ち・立位どちらの場合もしっかりと脚の力で体を支えられるように、『胸より少し低い』くらいの硬めの素材が良いです。また足元は裸足で滑らないマットの上で行いましょう。

つたい歩き・歩行期

この時期はいよいよ歩行獲得に向けた最終段階です。適切なサポートで一歩一歩の経験を積み重ねていきましょう。

①つたい歩き

平らなフローリングではなく、あえて『人工芝のマット』や『お風呂のジョイントマット』、『砂浜や芝生』などの上で裸足でつかまり立ちさせたり、つたい歩きをさせてみましょう。低緊張の赤ちゃんが苦手な足の裏からの感覚を鍛えることができます。

②歩く練習

手押し車(おもちゃ)に重しを乗せましょう(水を入れたペットボトルなど)。赤ちゃんが力を込めて押さないと動かないことで、体幹や脚の筋肉をしっかりと鍛えることができます。また重い手押し車の方が安定しやすいため、これも不安定になりやすい低緊張の赤ちゃんには有効です。

外を歩くときは、適した靴が必要です。低緊張の赤ちゃんには足首まで固定できるハイカットシューズを選んであげましょう。その条件に合っているのはアシックス(asics) スクスクです。

靴選びについて詳しく知りたい方はこちらの記事もあわせてご覧ください。
▶失敗しないファーストシューズの選び方

過緊張の赤ちゃんへの関わり方・遊び方

どの段階においても、無理に手足を曲げ伸ばしせず、まず筋肉を緩めてから、次の動作へ誘導するのが良いです。

首すわり期

首すわり期は、まず体全体の力を抜いてあげることが最優先です。

①体を丸める

過緊張の赤ちゃんは反り返りや手足の突っ張りやすさがあるため、体を丸めて力が抜ける時間をたくさん作ってあげましょう。

具体的に大人が赤ちゃんの足首付近を持って、『足を胸に近づける』ようにしてみてください。そうすることによって赤ちゃんの力が自然と抜けやすくなります。
※力で勢いよく曲げようとすると逆効果なので、ゆっくりと行いましょう。

その状態で骨盤を左右に優しく揺らすことも有効です。

②うつ伏せ練習

まだ首がすわっていない段階のときは頭を持ち上げようと過度に力が入ってしまいやすいため、丸めたバスタオルを胸の下に入れて、余計な力が入らないようにしましょう。

寝返り・お座り期

寝返りやお座りを練習するこの時期は、姿勢を保とうとするほど全身に力が入りやすくなります。無理に動かそうとせず、まず力を抜いた状態を作ることを意識しましょう。

①体を丸める

この段階でも、先ほどの体を丸めるアプローチで筋肉を緩めてから、寝返りやお座りの練習をしましょう。

②お座りの練習

両脚が突っ張った状態で座りやすいため、大人の手で『股関節と膝を曲げてあげた状態』でお座りさせましょう。姿勢を作ってあげます。この方が後ろに反り返りにくくなります。

万が一、反り返って倒れてしまっても安全なように後ろにクッションを置いたり、大人が後ろで見守ったりしましょう。

ハイハイ・つかまり立ち期

手足の突っ張りは姿勢の安定を妨げやすいです。そのため各動作の練習では、力が抜けた状態を意識して関わっていきましょう。

①四つ這い姿勢

リラックスした姿勢になるように手と膝の間隔を少し「広め」にしてください。そうすることで体を支える面積が広がり、姿勢が安定しやすくなります。
また手を握り込んでしまいやすいため、「グーの手」を優しく「パーの手」にしてあげましょう。

②つかまり立ち練習

過緊張の赤ちゃんはつかまり立ちをしたときに、つま先立ちになりやすい特性があります。しっかりと足裏全体を床に着けられるように、つま先立ちをしていたら腰を少しだけ後ろに引いてみてください。そうすることで重心が後ろに下がり、自然とかかとをつけることができます。

つたい歩き・歩行期

実際に歩く経験を積み重ねることによって、過緊張による動きのぎこちなさが少しずつ和らいでいく段階です。

①つたい歩きの練習

つたい歩きに慣れてきたら、赤ちゃんがつかまっている台の背中側にもう一つ台を置いてみましょう。体の向きを変えるときに過緊張の赤ちゃんが苦手な体幹をひねる動作が自然と生まれます。

②歩く練習

外を歩くときは、適した靴が必要です。過緊張の赤ちゃんはつま先立ちになりやすいため、踵と足首まわりをしっかりと支えることのできる靴を選んであげましょう。その条件に合っているのはニューバランス(New Balance)313です。


専門機関への相談の目安

以下の項目に当てはまる場合は、専門機関への相談をおすすめします。

『低緊張』相談の目安

  • 生後4ヶ月を過ぎても首がすわる気配がなく、うつ伏せで頭を全く持ち上げない
  • 抱っこしたときに体がぐにゃぐにゃと柔らかすぎ、ずるずると下に滑り落ちてしまう(抱きごたえがない)
  • 生後8〜9ヶ月を過ぎても背中がU字に丸まったまま潰れてしまい、お座りの姿勢をキープできない

『過緊張』相談の目安

  • 生後2〜3ヶ月を過ぎても、授乳や抱っこのたびに体を後ろにビーンと弓なりに激しく反り返らせる
  • 手足が常に突っ張って硬く、オムツ替えや衣服の着脱(袖に腕を通すなど)が常に極めて困難である
  • 手足の突っ張りや筋肉の硬さに、明らかな左右差(片側だけが常にガチガチに硬いなど)がある

作成基準

※乳幼児身体発育調査における月齢ごとの発達の目安と、脳性麻痺や神経疾患の早期発見のための臨床スクリーニング基準を元に作成しています。

まとめ

低緊張・過緊張はどちらも赤ちゃんの姿勢や運動発達に大きく影響しますが、個人差要因によるものは成長とともに落ち着いていくことが多いです。

まずはお子さんの状態がどちらに近いかを把握したうえで、今回紹介した関わり方を日々の生活の中で少しずつ取り入れてみてください。気になることがあれば、一人で抱え込まずお気軽にご相談ください。

このサイトの発達ガイドをまとめた記事はこちらです。月齢別のチェックリストや各動作のつながりなどを一覧で確認できます。
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