理学療法士が教える|ハイハイしない赤ちゃんの原因と関わり方

「同じ月齢の子はもうハイハイしているのに、うちの子はまだ…」

「なぜハイハイしないんだろう?何か問題があるの?」

「ハイハイさせてあげたいけど、どう関わればいいか分からない」

そんな不安を感じていませんか?

ハイハイは、体幹・腕・脚の筋力をまとめて育てる、発達上とても重要な動作です。しないからといって必ずしも問題があるわけではありませんが、できるだけ経験させてあげたい動きであることは確かです。

この記事では、理学療法士として発達障害の領域に10年以上携わった経験をもとに、ハイハイしない原因と、それぞれへの関わり方をわかりやすく解説します。

目次

ハイハイとはどんな動作か

ハイハイとは、手と膝を床につけた四つ這いの姿勢で、「右手と左足」「左手と右足」が対角線上にペアになって交互に動く全身運動です。

体幹・肩まわり・股関節まわりの筋力と、手のひらや膝からの感覚を統合しながら前進する、難しい動作です。

ハイハイの仕組みや段階・発達への効果について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。

【内部リンク:ハイハイ動作記事】

ハイハイしない原因

ここではハイハイしない原因を大きく3つ紹介します。

①個人差・環境要因

ハイハイをしない赤ちゃんの中で最も多いのが、この個人差・環境要因によるものです。

個人差による要因

発達のスピードには個人差があり、ハイハイをしない理由はさまざまです。
その例を以下にいくつか挙げます。

  • 筋力不足によって体がまだハイハイの段階になっていない
  • 移動への好奇心より、座って手元で遊ぶことを好む慎重な性格
  • 股関節の柔軟性が高すぎる・低すぎることでバランスが取りにくい

また中には、そのままハイハイをほとんどせずに立ち上がる子や、ずりばい・シャフリング(お座りのまま移動)で代替してしまう子などもいます。

環境による要因

こうした個人差の中には、生活している環境が要因になっている可能性も考えられます。
その例を以下にいくつか挙げます。

  • フローリングが滑りやすく、手足に踏ん張りが効かない
  • バウンサーやベビーチェア、抱っこなどの時間が長く、床で自由に動く機会が少ない
  • すぐ手が届く範囲に物が揃っており、移動の必要性がない

以上のような環境で生活していると、四つ這いの姿勢を保持するための腹筋や背筋、肩周囲の支持力が未発達のままになってしまいます。
その結果、動きを学ぶ機会が減ってしまい、ハイハイが出てくる時期になってもなかなかできないことが多いです。

②低緊張・過緊張による要因

筋肉の張り具合(筋緊張)に異常がある場合、四つ這い姿勢を保つことが難しかったり、そこからスムーズに手足を動かせなかったりします。

低緊張による要因

筋肉が柔らかく、力が入りにくいため、重力に逆らって体を支えることが難しいです。四つ這い姿勢を保とうとしてもお腹が落ちてしまったり、腕で体重を支えきれずに崩れてしまったりします。

過緊張による要因

筋肉が過度に硬く、手足が突っ張りやすいため、四つ這い姿勢自体は取れても、手足を交互に動かしたり、曲げたりする動きが出にくいです。

③疾患・発達障害による要因

疾患や発達障害がある場合も、ハイハイが出にくいことがあります。以下に代表的なものを挙げます。

脳性麻痺による要因

脳への損傷により筋緊張の異常や運動麻痺が生じ、四つ這い姿勢の保持や手足の協調した動きが難しくなります。特に体幹と手足を分離させる運動が苦手なため、左右の手足を別々に動かす交互運動が妨げられやすいです。

ダウン症による要因

全身の筋緊張が低い(低緊張)ことが多く、体を支える力が弱いため四つ這い姿勢が取りにくくなります。さらに低緊張に加え、関節の緩さによって踏ん張りが効かず、手足が外側に広がってしまうことも要因となります。

自閉スペクトラム症による要因

感覚の過敏・鈍麻や、運動の模倣が苦手なことが影響し、ハイハイの動きが出にくい場合があります。特に手のひらに感覚過敏があると、床に手をつくこと自体を嫌がり、ハイハイを回避してしまう場合もあります。

発達性協調運動障害による要因

筋力には問題がなくても、頭の中で「体の動かし方の組み立て」がうまくいかず、複雑な全身運動であるハイハイの習得に時間がかかる傾向にあります。

これらが疑われる場合は、専門機関での評価と継続的なサポートが重要となります。

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原因別の関わり方

ハイハイしない原因によってアプローチの方法は変わってきます。それぞれの原因に合わせた関わり方をお伝えしていきます。

①個人差・環境要因への関わり方

個人差要因

1.タミータイムの継続
1日の中で短時間で良いので、何度も「うつ伏せ」で遊ぶ時間を設けてあげてください。

2.ハイハイの前段階の動作で準備
「ずりばい」をたくさん行い、腕で体を支える力や、手足を交互に動かす感覚を身につけさせてあげましょう。

3.四つ這い姿勢のサポート
赤ちゃんのお腹の下に丸めたタオルや、大人の太ももを入れ、疑似的に四つ這いの形をつくってあげてください。それによって手や膝で体を支える感覚を育てていきましょう。
さらに、そこから手を伸ばせば届く位置におもちゃを置けば、片手で体を支える練習にもなります。

「ずりばいをたくさん行うためには、どうすれば良いの?」っていう方にはこの商品がおすすめです。

環境要因

1.床の環境を整える
フローリングにジョイントマットやプレイマットを敷き、滑りにくくし、さらに膝への負担も少なくしてあげましょう。

2.床で自由に動ける時間の確保
バウンサーやベビーチェアの使用時間を見直してみてください。赤ちゃんが自発的に床で動くことによって、自然とハイハイに必要な力が育っていきます。

3.ソフトブロックを使用してみる
ハイハイのきっかけになりやすい商品を導入してみるのも、一つの手です。

②低緊張・過緊張への関わり方

低緊張

低緊張の赤ちゃんには、まず四つ這い姿勢を保つ練習から始めることが大切です。

1.まずは環境を整える
柔らかい床だと安定しにくいため、固めのジョイントマットなどで、手や膝が沈みにくい床環境を整えてあげましょう。
また低緊張の子は感覚が入りにくいため、短いズボンで膝を出し、裸足になって直接床に触れるようにしてください。

2.重力に逆らった姿勢をたくさん行う

大人がソファで少しリクライニングした状態で、お子さんを胸の上で対面(うつ伏せ)にしてみてください。大人の顔を見ようと頭を上げる動きが『背中の筋肉を活性化』させてくれます。
ここで注意点として、低緊張の赤ちゃんは疲れやすいため、短時間で何度も行うことを意識してあげましょう。

3.四つ這い姿勢のサポート
大人の太ももや丸めたタオルをお腹の下に入れ、四つ這い姿勢を補助してあげましょう。
四つ這い姿勢が取れたら、さまざまな位置(手を伸ばせば届く位置)におもちゃを置いて、前後左右に体重移動する練習を少しずつ取り入れてみてください。

四つ這い姿勢が取れるようになったら、こちらの記事を参考にしてみてください。
【ハイハイを効果的に促す方法】

過緊張

過緊張の赤ちゃんには、まず全身の緊張を和らげてあげる関わりが最優先です。

1.筋緊張を緩める時間をつくる
入浴後など筋肉が緩んでいるタイミングで、手足をゆっくり動かす遊びや体を「丸める」「ねじる」体操を取り入れてみてください。

2.「面」で触れて安心感を与える
指先でつまむように触れると緊張を強めてしまうので、大人の手のひら全体で、筋肉の太い部分(太ももや二の腕)を包み込むように触れてあげましょう。

3.四つ這い姿勢でのポイント
リラックスした姿勢になるように膝の間隔を少し「広め」にしてあげましょう。
また手を握り込んでしまいやすいため、「グーの手」を優しく「パーの手」にしてあげましょう。

③疾患・発達障害への関わり方

同じ診断名であっても、お子さん一人ひとりの特徴は大きく異なります。そのため、ここで紹介する関わり方はあくまでも一例です。お子さんの状態に合わせた個別の関わり方が気になる方は、こちらからご相談ください。
→【相談窓口リンク】

脳性麻痺

脳性麻痺の赤ちゃんには、全身の突っ張りを和らげ、手足をバラバラに動かす練習から始めることが重要です。

1.身体を「ねじる・分ける」動きを引き出す
仰向けでおもちゃなどを使って、ゆっくり寝返りさせます。このとき、大人が骨盤を優しく押さえることで体幹の「ねじる」を作ってあげてください。これによって全身が一本の棒のように突っ張るのを防ぐことができます。

2.体幹を安定させる
体幹が安定しない状態で手足を動かそうとしても、うまく動きが出てきません。四つ這い姿勢を行うときは『大人の腕やタオルなど』をお腹の下に入れて、体幹を支えた状態にしましょう。
最初は赤ちゃん自身が3割程度の力で支えているくらいのイメージで、しっかりサポートしてあげると良いです。そこから赤ちゃんの体幹が安定してきたら、少しずつサポートを減らしていきましょう。

3.四つ這い姿勢の中で重心移動させる
一人で安定して四つ這い姿勢をできるようになってきたら、さまざまな位置(手を伸ばせば届く位置)におもちゃを置いて、前後左右に体重移動する練習を少しずつ取り入れてみてください。

ダウン症

ダウン症の赤ちゃんには、低緊張と関節の緩さをサポートし、手足で床を押し返す力を育てることを優先しましょう。

1.床を押し返す感覚を掴む
低緊張の子は感覚が入りにくいため、短いズボンで膝を出し、裸足で固めのジョイントマットの上に乗せてあげてください。手のひらや膝からの感覚が筋緊張を高めるきっかけになります。

2.重力に逆らった姿勢をたくさん行う
大人がソファで少しリクライニングした状態で、お子さんを胸の上で対面(うつ伏せ)にしてみてください。大人の顔を見ようと頭を上げる動きが背中の筋肉を活性化させてくれます。
ここで注意点として、ダウン症の赤ちゃんは疲れやすいため、短時間で何度も行うことを意識してあげましょう。

3.四つ這い姿勢のサポート
関節が緩く外側に広がりやすいため、四つ這い姿勢をサポートする際は『膝が外に開きすぎない』よう大人の手で膝を軽く内側に寄せてあげましょう。そうすることで、手足でしっかりと床を踏ん張れるようになります。

自閉スペクトラム症

自閉スペクトラム症の赤ちゃんには、感覚の過敏さに配慮し、お気に入りの物や分かりやすい目印を使って自発的な移動を促すことが大切です。

1.感覚過敏への対応
手のひらに感覚過敏があり床に手をつくことを嫌がる場合は、まずはその感覚に少しずつ慣れていくアプローチが大事です。
例えば、『大人の手のひらや柔らかいマットの上に手をつく練習』から始めたり、『お気に入りのタオルなどを手の下に敷いて床に直接触れさせない』ようにするなど、少しずつ手のひらに体重を乗せる感覚に慣らしていきましょう。

2.「本人の強いこだわり」を活かす
大人の真似をして動くことが苦手な特性のため、見本を見せて真似させるよりも、本人が一番好きなおもちゃを少し先に置き、自然と動きを引き出す方が良いです。

3.注意散漫の防止
周囲に色々な物がある環境では注意が散漫になって、動きが止まってしまいやすくなります。
そのため目から入る情報を、できるだけ進む先にある好きなおもちゃ一点に絞れるような環境で行うようにしましょう。

発達性協調運動障害

発達性協調運動障害の赤ちゃんには、筋力よりも「動きの組み立て方」を学ぶ関わりを行い、交互運動をスムーズに引き出すことが大事です。

1.苦手な感覚を刺激する
手足の位置やバランスの感覚が弱いため、『大人の体の上で安全に左右に揺らされたり』、『うつ伏せや仰向けの赤ちゃんの手のひらや足の裏に大人の手を当て、その大人の手を押し返す動きを促したり』してみましょう。
そうすることで感覚が刺激され、四つ這いの姿勢が安定しやすくなります。

2.動きを分解させる
四つ這い姿勢でおもちゃなどを手を伸ばせば届く位置に置いて、片手で体を支えながら、もう片方の手を伸ばす練習をしてみてください。おもちゃを置く位置は左右や斜め後方など色々変えてみましょう。
また四つ這い姿勢が崩れない範囲で、『大人が赤ちゃんの片脚を後ろに軽く引っ張って』みてください。その動かされた片脚を戻す動きが出れば成功です。

3.リズムを使う
「いち、に、いち、に」というリズムに合わせて大人がお尻や背中を優しくタッチします。
このリズムに乗ることで、赤ちゃんが手足を交互に踏み出すタイミングをコントロールしやすくなる場合があります。

まとめ

ハイハイをしない原因について、代表的な3つを紹介しました。まずはお子さんがどのタイプに当てはまるかを観察してみてください。

原因によって関わり方は異なりますので、その子の特性に合った関わりを行って、ハイハイにつなげていきましょう。

「うちの子はどのタイプなんだろう?」「もっと具体的なアドバイスが欲しい」という方は、お気軽にご相談ください。
→【相談窓口リンク】

ハイハイの仕組みや効果を詳しく知りたい方はこちら
→ハイハイ動作記事へ

9〜12ヶ月の発達全体を知りたい方はこちら
→[9〜12ヶ月の発達サポートはこちら]

また、発達全体の流れを把握したい方は、こちらの記事もあわせてご覧ください。

→[乳幼児の発達サポート完全ガイド]

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プロフィール

理学療法士。小児発達領域に10年以上従事。
乳幼児期を中心に、同じお子さんに週に数回ペースで継続的に関わりながらリハビリに携わっていた経験もあります。日常の動きや経過をじっくり追えたことで、停滞しやすいポイントや発達のプロセスを肌感覚で把握できたことが、私の強みになっています。
本サイトでは、その臨床経験をもとに、専門家でない保護者の方でも自宅で実践できる具体的なアプローチをお伝えすることを最優先にしています。

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