理学療法士が紹介│歩行を効果的に促す方法

赤ちゃんが『いつ頃歩けるようになるのか』、また『どうすれば歩行を促せるのか』、気になる方も多いのではないでしょうか。

歩行は、ただ移動手段が増えるだけではありません。両手が完全に自由になることで手先の発達が促され、視野が広がり、認知面の発達にも深く関わってきます。

この記事では、理学療法士として発達障害の領域に10年以上携わった経験をもとに、歩行の仕組みや安定までの段階、そして日常でできる練習方法をわかりやすく紹介していきます。

目次

歩行とは?

『歩行』は、つかまり立ち→つたい歩き→立位を経て、手で支えることなく一人で歩いて移動することで、1歳(12ヶ月)頃からできるようになってきます。乳児の粗大運動の発達において、一つの区切りになります。

歩行安定までの段階

歩行はすぐに安定するわけではなく、段階的に洗練されていきます。ここでは各段階の特徴を紹介していきます。

歩行初期(1歳頃)

歩き始めはまだ歩き方が未熟で不安定なため、『両腕を肩の高さまで挙げ、両肘を曲げた姿勢(ハイガード)』になっています。また左右の『脚の間隔を大きく広げ(ワイドベース)』ながらバランスを取るのも特徴です。この頃は歩幅が狭く、頻繁に転倒します。

歩行中期(1歳2~3ヶ月頃)

歩き始めから数ヶ月が経ち、少しずつ慣れてくるため、歩行初期のように両手を高く挙げる必要がなくなり、『両腕の位置が胸やお腹あたりへと徐々に下がってきます(ミドルガード)』。また脚の間隔も少し狭くなり、移動のスピードが上がり、さらに躓きにくくもなってきます。

歩行後期(1歳半頃)

この頃にはだいぶ歩行が安定してくるため、手を挙げてバランスを取る必要がなくなり、『両腕を自然に下ろして(ローガード)』歩けるようになります。また脚の間隔もさらに狭くなり、『小走り』『急に立ち止まる』『曲がる』などの動作も獲得していきます。

歩行に必要な能力

歩行の獲得には、複数の能力が組み合わさって機能することが必要です。それぞれの能力がどのような役割を果たしているのか紹介します。

下肢の筋力

歩行は片足立ちの連続した動作であるため、1歩1歩をしっかりと踏み出すためには下肢の筋力が十分に育っている必要があります。これはつたい歩きの横移動を通じて、発達していきます。

バランス能力

歩行では移動に伴って、重心が常に前後左右に大きく揺れ動きます。そのため、この重心のブレを瞬時に感知し、転倒を防ぎながら前進し続けるバランス能力が歩行には必要です。

体幹の安定性

体幹が安定しているからこそ、上半身の揺れを抑えることが可能になります。体幹が弱いと、脚を踏み出した衝撃で上体が前後に崩れてしまいます。

協調性

右足を前に出したら次は左足を出す、という『左右交互の規則的なリズム』を無意識に作り出す神経系の働きが必要です。また着地の衝撃に合わせて足の指先で床をグリップするなど、全身の筋肉を絶妙なタイミングで連動させる協調運動能力も歩行には欠かせません。

歩行の練習方法

歩行の練習は段階を踏んで進めることが大切です。赤ちゃんの発達状況に合わせながら、無理なく取り入れてみてください。

手押し車

つかまり立ち、つたい歩きが十分に安定した後のタイミングで行うことが効果的で安全です。手押し車に適度に体重を預けながら足を前に出すことで、歩行獲得に向けて『前へ進むこと』や『重心移動』を経験することができます。
※使用する際は、床の上のコード類やおもちゃを片付け、広いスペースを確保した上で、壁や家具にぶつかって転倒してもケガしないように、大人がすぐ近くで見守ってください。

壁を利用する

歩行獲得前の赤ちゃんが1歩を踏み出すきっかけ作りになります。手押し車での遊びが上達した後の段階で行うのが効果的です。

赤ちゃんを壁が背にするように立たせて、大人が「おいで」と言って、歩くことを促してみてください。最初は1歩進めば、赤ちゃんを掴める距離で促すのが良いです。
そこから慣れてきたら徐々に離れて2歩→3歩→4歩と、少しずつ歩数を増やしていきましょう。

ポイント
数歩促すときは最初から離れた場所で促すのではなく、赤ちゃんが前に進んだら、その動きに合わせて一緒に離れていくような促し方をしてください。

屋外を歩く

歩行獲得したばかりの赤ちゃんにとって、不安定な場所や傾斜のある屋外での歩行は難易度が高いです。そのため、屋外を歩く経験は歩行の発達にとって非常に有益です。

屋外での歩行は『歩行中期(1歳2ヶ月~3ヶ月)』の連続して数m~数十m歩けるようになったタイミングで開始するのがオススメです。

難易度の順番

  1. コンクリートなどの平らで硬い地面(難易度:低)
  2. 踏み固められた土の上(難易度:中)
  3. 芝生や砂利道、斜面(難易度:高)

まずは難易度の低い場所から始めていき、慣れてきたら徐々に難易度を上げていきましょう。

注意点

歩行練習中に気をつけてほしいポイントをまとめました。安全な環境を整えながら、赤ちゃんのペースで練習を進めていきましょう。

環境整備

階段

歩けるようになっても階段を昇り降りできるようになるのはまだ先です(1歳半以降)。赤ちゃんが一人で階段に近づいて、転落するのを防ぐためにゲートなどを設置しておきましょう。

家具

歩行獲得直後はまだ脚を上げて歩くことができません。そのため、わずか数センチのカーペットの端や部屋の敷居などでも簡単に転倒してしまいます。床面はできるだけフラットにし、また転倒しても固い家具の角にぶつからないような環境設定が必要です。

靴下

室内では床滑りによる転倒を防ぐために裸足で歩くようにしましょう。また裸足で歩くことによって、足の裏の筋肉や感覚が発達しやすいというメリットもあります。

間違った歩行練習の方法

手引きで歩行させる

大人が赤ちゃんの両手を引っ張って歩かせる練習は、赤ちゃんが自分でバランスを取る機会を奪ってしまいます。これを続けていると、逆に歩行の獲得が遅れてしまう可能性があります。手押し車や壁を使った、自発的にバランスを取る練習を行いましょう。

歩行器(ベビーウォーカー)の使用

歩行器(ベビーウォーカー)の使用は手引きの歩行と同じように、赤ちゃんが自分でバランスを取る機会を奪ってしまうため、歩く練習としては避けることをおすすめします。

適切な靴を履く

赤ちゃんの足の骨格はまだ柔らかく、靴の影響を受けやすい状態です。屋外を歩行する際は、適切な靴を選ばなければ、足の骨格や歩行発達に悪影響が出てしまう恐れがあります。

ファーストシューズの選び方についてはこちらの記事を参考にしてください。
▶理学療法士が伝授│ファーストシューズの選び方・履かせ方

要注意の目安

赤ちゃんの歩行で気になるサインが見られた場合の目安をまとめました。あくまで参考として、気になることがあれば相談してください。

獲得の遅れ

赤ちゃんの発達は個人差があるため、必ずしも異常とは限りませんが、1歳2~3ヶ月頃になると9割以上の赤ちゃんが歩行を獲得できるとされています。そのため、その時期を過ぎてもなかなか歩行を獲得しない場合には注意が必要です。

異常な歩行

  • かかとを着けないで、つま先で歩く(尖足歩行)。
  • つま先が極端に内側を向いて歩く(うちわ歩行)。
  • お尻を左右に大きく振りながら、上半身を揺らして歩く(アヒル歩行)。
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まとめ

今回は、歩行の仕組みや安定までの段階、日常での練習方法について紹介しました。
歩行の獲得は乳児期における運動発達の大きな節目です。焦らず赤ちゃんのペースに合わせながら、安全な環境を整えて見守っていきましょう。

歩行期の発達全体を知りたい方はこちら ▶1歳〜1歳半の月齢別記事へ

このサイトの発達ガイドをまとめた記事はこちらです。月齢別のチェックリストや各動作のつながりを一覧で確認できます。▶【乳幼児の発達サポート完全ガイド】

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